ふみちゃこ部屋



イホイホ合唱隊とタハー貝の夕べ。

昭和の時代、義務教育におけるガッコーの先生らのなかには、独善的な情熱に駆られ、感情の流れるまま、自由に盛り上がり、怒り叫びまくってひとが多かったと思う。
自分が叱られてるのじゃなくとも、「うわぁ、こんな風に皆んなの前で言われたら、もー、これ、一生もんでしょう、はぁ・・・」と、胸が痛くなることも幾度かあった。
・・・て、流れ矢でもないのに、勝手に魂の中核を突かれた気持ちになり、半世紀経っても、そのシーンを今だにフラッシュバックして苦しくなるのは、私が魂を病んでいるからである。こっ酷く罵倒されてた隣の席の子は、逞しく成長して、元気に生きてるかもしれないのに。
あ。て、いうことで、早くも結論が出たのでおやすみなさい。

や。なんで怖い先生の話になったん。
私はただ、小学生の時分、半ば強制的に所属させられていた、イホイホ合唱隊について記し、ほっこりとした笑いを取りたいだけなのに・・・。

ああ。
その合唱隊の担当の先生。
子供の頃満州からから引き揚げてきたという、白眼際立つ眼光鋭い、目力マックスな女性だった。自分らの世代が耐え忍び、くぐり抜けてきた、命ぎりぎりのところの苦労と比ぶれば、戦争を知らない、ニッスイのインスタントラーメンやソーセージをぬくぬくオヤツに食べて、無条件で命の保証がなされ、好き勝手なことをしている子どもらには、愛という名の叱咤の鞭をふるわねば、となるは、道理であったとも思うのだが・・・。


ある放課後、久方ぶりに練習にやって来た生徒に、女性音楽教師は言い放った。
「ずっと練習来ないで、発表近くなった今になって来たところで、お前の場所はない。帰れ。」
取り敢えず今日のところは帰って反省して出直しなさい的な含みを持たない、いきなりの最後通牒であった。

自分が拒まれたわけでもないのに、その時の、一学年上級の男子の、一瞬で固まった表情、皆の視線のなか、魂の死地へ赴くような暗い目になり退場していく様子などが、胸の奥に焼きつき、お焦げになって、にがい風味が、喉の奥に甦る。
それは私が、ひと1.5倍ぐらい、いや、もっとだ、ひと100倍ぐらい、人から拒まれることを拒みたいにんげんだからだろう。
それは私が、病気だからである。
私が病気という結論が出たので、それでは、おや・・・

おやす・・・おや。や。や。

わたすは、ほっこりほのぼのな、イホイホ合唱隊について記し、クスっと、笑っていただこうとしているだけなのに、何故だ、たどり着かぬ。

・・・満州帰りのR先生は、(満州帰り、と書いたら、中山ラビ「上海帰りのリル」を思い出したので、先生のこと、リル、の頭文字で、R指定、いや、R先生、と致しました)まっこと、キビキビびしびし、合唱隊の子らを指導してくださっていた。
R先生は、来たる合唱大会に向けて、自由選択曲の方は、仕上げるのがかなり難儀な曲をチョイスするのが常だった。やり遂げた時の達成感の素晴らしさ、快感を、知っている方だったんだろう。
音楽の父や母の肖像画の下、音楽室の黒板に描いた難しい曲の楽譜の、彼女が強調したい部分には、記号や文字が、力強く書き加えられていく。
黒板を前にしたR先生の勢いと筆圧に、志半ば折れ飛んでいった白墨たちも枚挙にいとまがなかったことは、言うまでもありますまい。(ここ、盛りました)

アルトもソプラノもメゾソプラノのひとびとも、合唱隊のメンバーたちは皆、(ちなみに私の担当はアルトだったのですが、普段の会話のトーンの高さとは違うものなんだと、と子ども心に感心していました)R先生が書きなぐりになられる記号や文字の示すことごとを表現していこう、追いついていこうと必死だった。

「緑の牧場」
というタイトルだった気がする。
出だしが、
げ〜んきなこーえーひっびーくよーみーどりのまーきぃーばぁー
“元気な声響くよ、緑の牧場”

皆で数回出だしを歌ったところで、R先生は、例によって、パシパシ、“緑の牧場”の後に、文字を書き加えた。
カタカナで、イホ、とあった。

選ばれし我々合唱隊は皆、訝しく感じながら、R先生を信じてついていくしか選択肢はなかった。死なば諸共、多分そんな所存だった。

げ〜んきなこーえーひっびーくよーみぃどりのまーきーばー イホッ

あるアルトは震えながら、別のアルトは叫ぶように、後列のソプラノはうわごとの如く、横のメゾソプラノは何故だか瞳を輝かせ、・・・
ああ。私たちは、めいめいが、「イホッ」て、合いの手のような発声をしたんだ。イホを信じ、イホの側に魂を添わせたんだ。

次の瞬間。
R先生が、笑いながら、頽れてしまった。

「ちょっと、みんな、これ、漢字で、“休” て書いたのよ」

アルトもソプラノもメゾソプラノも、皆ひとつになって、大笑いした。

・・・でも、よく落ち着いてもう一度黒板を見たが、休、ではなく、やっぱり、あくまでもカタカナのイホに見えた。

・・・この件以来、私のなかで、R先生率いる合唱隊は、イホイホ合唱隊、という呼称で言い表されることとなり、人生において、似たような状況に陥ってしまうことを、イホイホ合唱隊現象が起きていると、述べて、やり過ごすことになった。
「ふっ、これは間違いなくイホイホ合唱隊化現象が、もの凄い速度ですすんでいますね」と、したり顔をするのである。

え。似たような状況。どんなだ。はてな。

いや。
イホイホ合唱隊現象は、個々の人生のみならず、あらゆる世界情勢、政治経済の領域を、人知れず深く、根底から揺るがしているのかもしれない。
書いている私ですら、具体的にどういった状況を指すのか、全く意味がわからないくらい、浸透してしまったということなのか。イホイホ合唱隊現象は。旋律、いや、戦慄を覚えてしまう。

・・・あ。タイトル後半部の「タハー貝の夕べ」
は、次回、と致します。
イホイホを笑っているうちに、タハーに復讐されるような、そんなお話になってしまうのじゃないでしょうか・・・。

今日も何言ってんだかな、ワケワカな記事であることよのぅ。


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by chaiyachaiya | 2017-07-20 11:49 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(0)
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