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ふみちゃこ部屋



消されたゴールドライセンスと、サヘルさん、佐村河内さんに泣いた夜

旅で知り合った方に礼状を送り、スーパーマーケットで、割引き品を求め、ささやかな幸福感に満たされて、自家用車にて家路を、ゆったりと進めていた私でした。
車内のスピーカーからは、日活ボリウッドフォーのうち、シャール・カーン主演の「JAB TAK HAI JAAN」(邦題 命ある限り)のCDの4曲名の、女性ヴォーカルによる静かなバラード『HEER』が流れていました。シャールク・カーン演じるサミールに、ヒロイン、ミラ の思いが、少しづつ流れ揺蕩うような、しっとりとした、どこか物悲しい一曲です。

とても素晴らしく見通し見晴らしの良い曲がり角を、ゆっくりと曲がったところ、紺色の制服を着た若者達に、手招きされました。
この先での、工事か何かの知らせなのか、ごく近くで事件が起き、情報提供を求められているのか、一体何なのかしら、と訝しがっていたのですが、その場で起きた事件とは、しいて言えば、私が、一時停止を怠った、というものなのでした。
「最徐行され、充分に安全確認をされたのも、わかっています。でも、一時停止、してませんでした」
若い制服の方が、言われました。

多分、色んな意味での、私の無知によるものだと思うのですが、事態を良く理解出来ず、只、眩暈がしました。
そして、ガザ地区、シリア南部アレッポ、チベット自治区、のイメージが、何故だかざくざくと、頭に刺さってきました。

「最徐行をし、充分に安全確認をした者であれ、はっきりとタイヤを止め、一時停止をしなかった者は、その場で射殺するように」
こういった文言の通達が、命令があれば、紺色の制服の人は、法を犯した者達に、躊躇することなく、プスン、ぷすん、引き金を引くのかなあ。
と、また極端なイメージにとらわれながら、
「暑いので、熱中症になりませんように」
なんでか、私は、制服の若い人に言っていたのでした。

帰宅後、録画していた「旅の力 」『失われた故郷の記憶を求めて〜サヘル・ローズ イラン〜』を見ました。
サヘルさんは、上野の国立博物館からの中継の際、
「この方が、国立博物館の〔生き地獄〕と言われている方です」(正しくは、〔 〕内は、生き地獄ではなく、生き字引。)
「これが、磁石のS極とM極です」(・・・S極とN極)
そして、博物館の展示ガラスケースの存在をうっかり失念され、近づき、ごおおおおお〜ん、と、その美しい鼻先をぶつけられ、スタッフから手渡されたテイッシュペーパーで、取り敢えず、自らの鼻を押さえ、「違うよ。じゃなくて、化粧着いちゃったガラスの方、拭くためなの」と、爆笑問題のひとに、突っ込まれたりしていらした。

以前、阿部なお さん作の人形、確か『額田王』だったと思いますが、嫋やかな女性の後ろ姿が見たく、ガラスの存在を忘れ、額を、ごおおおおお〜ん、と(サヘルさんと違い、ニホンジンな私は、鼻先ではなく、デコから)ぶつけたことのある私は、勝手に親しみを感じていたのです。(ちなみに、一緒に展示を見ていた家族は、さささ〜っと、と私の傍から散らばり、他人の振り、というパターンを決めこんだのでした。くくく。)

・・・「旅の力」で、同じイランの地での、『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピさんとは、また違う、苛酷な状況でのサヘルさんの頑張りや、フローラさんという、サヘルさんの育てのお母さんの、思いを貫く稀有な生き方に、心打たれ、図らずも、ちょっと泣いてしまいました。

続いて、作曲家の佐村河内守さんの特集を見ていた頬の上で、涙の量は劇的に増加、私はいつしか、ひくひく、小さな嗚咽の声を漏らしていました。
海岸で6夜の野営を張り、被災地の亡くなられた方々の無念さ、自然相手さ故のぶつけようのない気持ちを慮り、その果てに、音を得る、自らの耳は自由ではない、佐村河内守さん。
室内を、這って移動されている様子も、放映されていました。

その荒行苦行の先に、交響曲を書く、芸術を創る、という深みまでゆく方と、自分を、同じく考えることに、なんとなし違和感も覚えますが、私は、自分以外のひとの苦しみ悲しみを、一個でも、ナノグラム(?)でも、こんなふうには引き受けたことなど、全く無いのだと、改めて気づかされました。

好い人ぶるのが、実はライフワークみてえな、薄っぺらりんな人間が、この私のようです。

でも、そんな自分を、これまでのように、頭から否定する気力も、無いんでした。
なくした自らのゴールド免許ライセンスを嘆きつつ、眠りにつくだけが精一杯な夜なのでした。
by chaiyachaiya | 2013-06-17 20:07 | ねこの寝言
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