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ふみちゃこ部屋



踊る大黒天と、ナイトメア アフター クリスマス

ある程度古いマンションの、わりと上の階に、私は住んでいるようだった。
間取りはゆったりしていて、床の間のある和室の畳が緑の色味をすっかり失っているのは、南向きで日当たりの良い証らしく、部屋の空気は、卵黄をたくさん使ってまとめた新しい和菓子のように、僅かな違和感を含みながら、どこか、懐かしい。
父母は、いつの間に、このマンションに、引っ越したんだろう。
気配があり、話し声も聞こえているのに、父も母も、私の目には見えないままだ。
いや、私は、何を根拠に、この場所を、自分の家だとしているのだろう。
とにかくまず、両親を探しあて、この目で確認しなくては。

「あっ、大黒天。大黒天様の置き物」
昔から私の家の床の間にいらした、後頭部に小銭を射しこむ穴が空いてはいるが、貯金箱には見えないつくりの、高さ40cm程の大黒天さまが、このマンションにもいる。床の間で、以前の家にいた時と同じに、激しい笑顔で、立っていらっしゃる。
つまり、彼がいるということは、ここは、私の家で、いいんだ。
私は、床の間のその目出度い置き物と視線を合わせようとして、身を屈めながら近づいた。
その時、ぶわん、と、手脚が伸びた達磨さんの風情で、等身大(この場合、私と、ヒンデイーフイルムで、ヒーローとヒロインのダンスが出来る状態)まで巨大化した大黒天が、これまで通りの怖いくらいの笑い顔で、畳に降り、私と向かいあった。細い手脚だが、関節は、私よか、柔らかそうだ。
えええ。
思わず仰け反った私は、よろめきながら、横へとずれた。
正面の大黒天は、私のアクションを、そのまま、そっくりに演ってみせた。違うのは、私の表情が引きつっているのに対し、彼は、凄い笑顔を、私に向けている、ということだけ。
ちょっと不気味だったけれど、乗り越えられる程度のコワサだと思った私は、大黒天とのダンスに興じ始めた。
私の拙いダンスアクトを、大黒天が、滑らかで洗練された、ややヒップホップのにおいすらする動きに昇華させ、見事に踊ってみせる。その笑顔には、柔らかさが加わってきた。
ありがとう。大黒天。私、楽しい、楽しいよお。
「ぐあはははは」
と、大笑いした自分の声で、目が覚めた。

実家をたたむ際、あの大黒天様は、小銭を足裏から抜かれた後、博多人形や日本人形達とともに、私によって、廃棄物とされたのに、こうして、夢のなか、現れてくれた。ああ。

今年のクリスマスの次の日の夜の夢は、こうだった。
今住んでいる家の二階から、リビングにいる私の耳に、多国籍な人々の声が、ちらほら聞えてきた、と感じた瞬間、コサックダンスのチームや、インドのパンジャビー系から、オリッシーダンサー、リオのサンバチーム、ベリーダンサー、チアリーディングの米国女子団、ジェンベを抱えたアフリカの若者達、バイキング集団、バッキンガム宮殿の衛兵さん達、英国の木こり集団、中世スペインの宗教裁判官(ああ、だんだんモンティ・パイソン臭がしてきた、と夢の中でも感じました)などなど、な皆さんが、それぞれ極めつけのコスチュームを身につけ、「これからお楽しみだいっ」というノリで、階段を、がやがや駆け降りては、リビングの横を通り、どやどや玄関から外へ出ていく。
出口横の一室に私がいることは、彼らの意識には関係なさそうだし、自分らの出自や存在理由など、考えるヒマなど、益々ないようだが、ともかく、うちの二階では今、人種国境宗教の壁を越え、歌舞音曲系の楽しい人々が大量発生しては、賑やかに、楽しげに、世界に拡散しようとしている。
「うきゃきゃきゃきゃ」

またしても、自らの笑う声で目覚めると、朝方の薄闇のなか、緊張で身を硬くしたアビシニアンが、心配そうに、私の顔を覗きこんでいた。
アビにとっては、眠りのなか、夢に取り込まれた私の様子は、充分に、ナイトメアの領域に属していたようだった。
by chaiyachaiya | 2012-12-28 17:41 | ねこの寝言
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