ふみちゃこ部屋



いま一度、昭和の子どもSF「砂のあした」

【ぽっぺん先生】シリーズで知られる舟崎克彦さんのエッセイ集「これでいいのか、子どもの本!!」の対談のページに、1960年代、小沢正、井上洋介、という言葉を発見した私は、本棚を目指して階段をかけあがり、「砂のあした」の、1969年度初版本を、久しぶりに手にしました。

小沢正・著/井上洋介・絵 の子ども向けSFの表紙絵は、空と雲のした、広漠とした砂の大地に、まるで王家の谷の、ツタンカーメン王墓への入り口のような、地下への階段があり、そこを主人公のススムくんを先頭に、子供たちが地上の砂世界に向けて上っている場面、背表紙のほうは、砂に変化中か、砂からにんげん状態へ復帰中なのか、下半身、或いは顔だけ残して、砂と一体化している子らが描かれ、一番大きく描かれているススムくんの瞳からは、涙が零れています。

実際、「砂のあした」は、表紙絵のインパクトを裏切らない物語、作品でした。普通の意味でのハッピーエンドを迎えたのではなかろうと思われます。それまで読んだ冒険活劇とは、まったく趣きが違いました。
未体験の展開と、ちっとも可愛くない挿絵に、すっかり私の心は捉えられ、心踊らせながらページを捲り、めくるめく物語世界にいざなわれたきり、この子ども向けSFは、何十年経ようと、今も、私の心の辺境の、なくてはならない砂だらけオアシスです。

私が、本屋さんで、この本をねだった時の、母から同行を頼まれていた叔母の、厭そうな表情を、覚えています。それは、「砂のあした」が表紙絵からして児童書なのに不気味で嫌だ、というより、「小公女」でも、「赤毛のアン」でもない、こんな本を選び欲しがる、意志を持った、姪という小さい生きものへの、嫌悪だったように感じます。

数日前、テレビのニュースで、カナダかどこか、白人がマジョリティである国の話題として、放送されていたのですが・・・。
「童話って、幼くて純粋な子供に読み聞かせるにしては、怖い魔物や怪物が出てくるし、ストーリーも刺激的で残酷に過ぎるものが多く、子供が夜泣きしたりだから、ストーリー展開をやわらか版に変更して読んであげている」
ブロンドヘアのお母さんが、小さな男の子の横で、こんなぐあいに話していたのでした。

えええっ。
怖い魔物、怪物、刺激に残酷。これらに類する事柄、事態から無縁の【一生涯ゆりかごから墓場まで、真綿のよ~に柔らかく暖かな生】を送れるひとは、滅多にいないと思うのですが。

予め、童話や絵本、物語によって、魔に属する者たちとのお目通りを済ませておくことは、良いことだと感じてきたのですが。

ひとは、外からの魔、内なる魔、そしてそれらの絡みあう想定外だらけの物語性に満ちた時間を、宥めたりすかしたりしながら、折り合いをつけて、なんとか生きていかなければいけないようですから。
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by chaiyachaiya | 2012-12-16 13:17 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(0)
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