その夜、私は、ベッドに入ってからも止まぬ、あまりの頭痛に叫び声をあげていました。
「頭が痛いっ」って、言葉にしたわけではありません。
いえ、「アタマガイタイ」と発声したところで、猫のジュヒーに、理解出来るはずはないと思うのですが。
いつも私の胸のうえで踏み踏み、しっかり私を寝かせつけたと確認してから、寝室の背の高いクローゼットにジャンプし、定位置で眠りにはいるジュヒーが、その夜は、叫ぶ私の頸の辺りで、踏み踏みを開始しました。
本来なら、ちょっとテーブルから小物が落下した物音を聞いただけで、プチパニックな事態に陥り、ピューっと、部屋を駆け逃げていくジュヒーなので、私は、驚きました。
「叫ぶお母さん擬きなんか、気持ち悪っ、知~らないっ」
という扱いを受けるかのしれないな、と、ジュヒーをみくびっていたのです。
けれど、彼女は、踏み踏みの後、私の頭や頸に、すりんぴたん、ほわっ、と横顔や顎をくっつけてきます。
その感触は強過ぎず、余程の猫アレルギーでなければ誰もが、うっとり和んでしまうこと間違いない、心地良さでした。
20分ほど、ジュヒーは、繰り返していたようです。
私が、少しウトウトし始めた時は、まだ踏み踏みしていたように思うのですが、やがて、いつもの場所で、ジュヒーも眠りについていたのでしょう。
小一時間ほど経たあたりでしょうか、またしてもの、剣山をザクザク刺されるような頭の痛みに、「ううう」と、唸りはじめた私。
すぐにジュヒーは、棚からベッドに降り、苦しむ私の顔の、ごく側までやって来ました。
そして、再びの、ふみふみ、すりんぴたん、ほわっ。ふみふみ、すりんぴたん、ほわっ。
心のなかで、激しい痛みとジュヒーへの感謝の気持ちが、混じりあい、私は、ただ、子供のように声をあげて泣き続けました。そして、今度は、いつのまにか、朝まで眠ることが出来ました。
看護師さん、マッサージ師さん、というより、猫の気功師さん、という言葉を使いたくなる、不思議な猫セラピーの時間でした。
ジュヒー、ありがとう。