「ところであなたは、男性なの、女性なの、あ、いえ、両性具有、或いは、その他? あ、いえ、拘ってるわけじゃないんだけど、一応ね、聞いておいた方が、これから、何かと、その・・・」
お互いに、かみ合わない会話の担い手だということを悟った瞬間でもあった。
唐突に、骸骨の彼のことに触れられ、どうしていいのか、わからなかったし、少し腹立たしかったせいもある。
「あなたは、スーパーで豚肉買うときに、雄か雌かなんて、考えて買う、ってか? 違うよね、わたしが殿様でも姫様でも、あなたには関係の無きこと。」
言われてみれば、確かにそうに違いない。
私は、方針を変え、態度を改めてみた。
「そ、そうね。そ、それはそうとして、ええと、LPSさん、あなたは、私とあの彼が飛ぶところ、見たことがあるの?」
骸骨の彼について、相手が食用豚であれ、自分から話すのは勇気が要る。世界が何処でどう繋がり、影響しあっているかがわからない以上、自ら進んで彼のことを口にするのは、恐ろしい行為だった。
二度と一緒に飛べないどころか、会うことすら出来なくなってしまうのではあるまいか・・・。
「あなたが眠りの中で自らつくりだしてる彼なのにねえ、どうにもならないのねえ。逢いたくても逢えない。飛びたくても、この夢の街の地面に縛られたまま。
それはそうと、ねえ、知ってた? 飛ぶ夢を見る女って、男になりたいって願望があるんですってさ」
あいかわらず私の質問は無視されてしまったが、リトル ピンク スワインの言う事は、いちいち正しかった。
幼い時分から、よくよく、飛ぶ夢を見てきた。
それが、この十年ほど、骨の彼にいざなわれなければ、飛ぶことが出来なくなっていた。