ふみちゃこ部屋



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偽ベルサイユと神さまの住む家

私は血圧が低く、午前中はおろかお昼ご飯の後まで、病的とも思える眠気と倦怠感で動きがとれず、飼い猫の、【ニンゲンか〜ちゃん大丈夫か肉球もしもしソフトパンチ】を背後から貰い、やっと正気を得て動き出せたりしている身なのであるが、元来の優しい性質(??)から、私より更に血圧が低く、くらくらしているであろう友人に、私自身グラグラしつつも、我が飼い猫のもしもしパンチよりインパクトを有するであろう、友愛の気付け薬として、以前、こんなテレフォンをかけたりしたものだった。
「お早う〜。それではお待ちかねのクエスチョンです。
今から述べる三つしか、生きていく選択肢がないとしたら、あなたは、誰を選びますか?
あなたは、どの社長のラヴァーして生きていきますか?
①東横インのひと ②村上ファンドのひと ③ソフトバンクのひと。」
予測通り、友人は、私からの唐突な愚問によって、心拍数すらやや上昇させたらしい。
「んもうっ、いきなり、何なのお〜。」
プリプリした後、彼女は、しかし今度は、私に切り返してきた。
「て、あなたは、誰を選ぶの?」
「う・・・」
怯んだ私に、たて続けに来た。
「東横インの社長の家、あれには困る。空撮されてたけど、内部はまるで偽ベルサイユ。庭の土の地面に、赤い絨毯敷いてたんじゃない、参るよね、ああいう趣味」
質実剛健とそこはかとなさを融合させたような彼女の嗜好からいって、取り敢えず、許せないのは、東横インの、偽バリアフリーと偽ベルサイユだったようだ。
「許せないよね」
語気を強めた友人に対して、私は、何も応えられなかった。
「・・・まさか、ああいうの、好きって、こと?」
「・・・」
「何で黙ってるの? もしかして、好きなんでしょ、ああいう御屋敷」
図星だった。
私は、一見マホガニーやウオールナットの壁を、爪先でカリカリした時、白いベニヤ板が現れたとしても、嘘でもいいから、ゴーカ絢爛、書き割り御殿フェチと呼んでくれてかまわないぞ的な、趣味の悪いにんげんだったのだ。
「ああ、俺はな、大好きさ、偽ベルサイユ」
「うぬぬ、嫌だああああああ〜」
友人は、とんでもテレフォンによる低血圧の是正への感謝の言葉を、私に伝えることも失念したまま、大笑いしなさった。合掌&むふふ。

パンクロックの母と言われるパティ・スミスの恋人で、写真家のロバート・メイプルソープは、キリスト教の教義はともかく、教会の様式美、十字架やキリスト教的装束を好んでいたというが、そのような気分は、きっと多くの人びとが共有しているのではないか。

「フェリーニのローマ」のラスト近くに、教皇庁のファッションショー(?)の様なシーンが用意されている。
金銀ギラギラ、終いには、幾つもの髑髏を、光輪代わりの如くに従えて現れる、一頃の紅白における小林幸子さんも吃驚の、教皇様コスチューム。
「あ、アホでねえのか」
と嗤いつつも、きっと人類は、ゴーカ絢爛偽ベルサイユが好きなんだ。

テーラワーダ古代仏教の長、アルボムッレ・スマナサーラさんは、偽ベルサイユ的観点からすれば、穢い色の質素な衣を纏っておられる。
それは、カンタカとともに王家を出てからのブッダのコスチュームを想わせる。

あのう。私、思うんですが。
キリストが、生きて、放浪し、教えを説いていた頃の装束を、現代のキリスト者全員が着ちゃったら、素敵な気がする。

でも私は、偽ベルサイユが好きだなあ。
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by chaiyachaiya | 2013-03-22 23:05 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(0)

虫籠いっぱいの愛と不二家ミルキーの思い出

大好きだった童話絵本の挿絵の、低学年向けらしく、カジュアルタイムでも頭上に大ぶりな金色の王冠を戴いた王さまが、十一人の王子たちとエリザ姫が子供らしい遊びに興じている様子を見降ろしたり、後添え王妃の魔女が、呪いをかけて白鳥に変えた王子たちを追放したりした、石造りの城の見晴し台よりも、うんと低い場所にあったに違いないのだが、たった一度だけ、Kくんが、私たち級友を、薄暗い階段を手招きして連れて行ってくれた、Kくんのお父さんの仕事場の屋上からの眺めは、私のなかで、王子たちとエリザ姫の父王の領地に繋がったままだ。

見降ろすどちらの平原にも、高い建物は無く、緑が多くあった。

時々、私は、気がつくと、今はもう存在しない、Kくん所縁の建物の屋上に一人立ち、物語からの薫風が、頬を撫でていくのを感じる。
それは、切ない幸福感に陥るための眩暈のようでもあり、不意に、やって来ては、去っていく感覚だった。

幼稚園の頃、毎日のように、Kくんと遊んでいた。
Kくんがいなければ、私は、おんぶ状態の殿様蝗を見ることもなければ、茶色い液体を体から染み出させる醤油蝗というものを知ることも、艶消しブルーグレイのシオカラ蜻蛉や、鬼ヤンマの黒い脚先のざらざら感、タニシが川に生きてることも、わからずに、縫いぐるみのクマさんや、我が父チョイスのマイナーな着せ替え人形スカーレットちゃんと、孤独を囲って部屋に籠っていただろう。

幼稚園児にして、Kくんの貌は、例えば、古いのだけれど、昭和の、日活ニューフェイスの和田浩二及び、石原裕次郎のごくごく初期の頃の、見事に完成された美丈夫ぶりを誇っていた。Kくんは、そこにいるだけで、華があった。
可愛さとは無縁の、ぼうっとしたいじめられっ子の私は、幾たびもの、
「◯◯ちゃん、目瞑って」
に、「お口開けてて」が加わった時も、疑いもせず従い、虫歯だらけの奥歯まで全開にしては、園友によって、砂泥団子を口腔に突っ込まれたりしていた。
様々な目にあっても、つい性善説に依った行いをしてしまう、という人間認識の甘さは、今に続いていて、やや情けなく思う。

Kくんは、多分、わざわざ、いたぶり易い私をいたぶって、好い気分になる必要のない子供だったのだろう。
「◯◯ちゃんと、席隣りになれば良かったのに」
幼稚園の教室での席替えの後、振り向いて、そう言われると、挫けずに、やっぱり明日も生きていこう、と意を新たにしたものだ。
Kくんが持っていた七色のロウ粘土を、皆が欲しがった時も、Kくんは、一本、私の掌にだけ、分けてくれた。ああ、貰ったロウ粘土の色は、インデイゴブルーだったような気がする。時を遡って確かめられるのなら、命の時間が削れてもいいのだが・・・。

或る日、西日が黒ずむまで、おもいきり、Kくんのお父さんの仕事場の庭で、蜻蛉取りをして遊んでいたところに、母が、車で私を迎えに来た。
おとなしく座席に座った私越しに、助手席のドアを開けた母は、Kくんに、薄茶色の紙袋から不二家ミルキーキャンディの大きなおまけ付きBOXを取り出し、手渡した。目の前を通り過ぎた魅惑の品に、小さい私の心は、衝撃で張り裂けそうになった。
「お母さん、わたしのは? ◯◯の分のミルキーは?」
愚かにも、私は聞き、自分の分が無いと知るや、大泣きを始めた。
「◯◯ちゃん、蜻蛉、これ、いっぱい、ぜんぶ、あげるから」
さっきまで、蜻蛉と蝗で上機嫌だった園友の豹変振りに驚いたKくんは、困ったような、どこか大人びた真摯な表情で、自分の虫籠の口を開き、ありったけの蜻蛉や蝗を、私の虫籠に移動させた。
肩からかけた黄緑のケミカル素材の虫籠は、蜻蛉で犇き合い、羽音でごった返した。
私の泣き声の雫は、走り去った車から、尾を引いて、きっとKくんの足もとに、穢く零れ落ちていたことだろう。

幼児の私にとって、Kくんの虫籠いっぱいの愛よりも、おまけ付きミルキーキャンディBOXの方が、よほど大事だったのだ。その時の自分の有り様は、思い出す度に、今でもちょっと恥ずかしい。

ところで、その頃私は、モネもマネもドガもセザンヌもルノワールも、知るはずのない幼稚園児だったのだが、音の無い、不思議な夢を見ている。
印象派の筆致で画かれたような薄闇のなかを、遊覧船想わせる甲板の上、小ぶりながらコルセット仕立てのドレスを着た大人の私は、紳士のKくんと寄り添い、旅をしていた。いや、時間が縦に流れる旅をしている、というより、永遠を漂っている、という方が似つかわしかった。
どんよりと、揺蕩い、気怠いのだけれど、魂は、もうすぐ本来の故郷に辿り着きつつあるような、静かな歓びに満ちていた。そして、この船の浮かんでいる場所が、通常のこの世ではないことを、既に悟ってもいた。

時空を超えて、Kくんの未来を暗示するような夢を、私は、見ていたのだった。

二十歳を迎えることなく、Kくんは、神さまの傍に呼ばれてしまった。

とても美しい命の持ち主だった。

私は、それから三十余年、今のところまだ、なんとか生きている。不思議なことのように思う。
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by chaiyachaiya | 2013-03-10 08:10 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(0)

花形満の前髪とジュヒーの毛繕い

私 こと ヘタレの国からやってきた

へータレ・コイジア 或いは優雅なる怠慢

改め

低調なる気塞ぎの病の体現者 へータレ三世が

ヘタレの限りを尽くし

リビングでうつ伏せのまま 朝を迎えてしまった時

なんとか起きあがり 最初に見たものは

幾つもの 花形満の前髪のあの房が

大振りに 隙間なく あちこちの方向に屹立している

自身の頭部であった

溶けない真綿の綿あめみたいな体毛を櫛梳るための

強力な舌と唾液で

ジュヒーは まんべんなく 一晩かけて

シド・ヴィシャスもジョニー・ライデンも

もはやどんなパンクもたどり着けない地点まで

私の髪型を ワイルドで滑稽なズラの如くに

固めてくれていたのだった

朝の光りのなか

飾り棚の鏡に映じた我が姿に

へータレ三世は 此処が異郷の地であることも忘れ

そりゃあもう 大笑いしてしまった

ジュヒー ありがとう

たくさんの愛の毛繕いを ありがとう
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by chaiyachaiya | 2013-03-05 11:46 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(0)

て言われるとの詩

春が来ない冬はない

と 言われると

や でも いずれまた冬が

とは 返しちゃあいけないらしい

苦しいことがあるからこそ

また喜びもある に

聞き飽きました でもマズい

おぬし だから パン一個盗まなきゃあ 盗ませなきゃあ 良かったになあ

と ジャン・バルジャン 及び ビクトル・ユゴー に伝えるのは 畏れ多い

魂の救済カタルシスにたどり着くまでの

気力 胆力 体力 根性 無き我 ああ

この物語

結末にはもう こだわらないから

一刻も早く 終わらせてくれ とは

どの神様に 訴えればいいのだろう

また冬に行き当たる春や タオの貌をした喜びの隊列

ごっつあんです

I ,m so full

もう 喉下まで 来ております

でも give up とは まだ 言わないでおく

ことにしよう
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by chaiyachaiya | 2013-03-04 16:31 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(0)


猫と日常と非日常
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