ふみちゃこ部屋



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骨、或いは私の愛の物語 5 リトルピンクスワインとの対話

「ところであなたは、男性なの、女性なの、あ、いえ、両性具有、或いは、その他? あ、いえ、拘ってるわけじゃないんだけど、一応ね、聞いておいた方が、これから、何かと、その・・・」
お互いに、かみ合わない会話の担い手だということを悟った瞬間でもあった。
唐突に、骸骨の彼のことに触れられ、どうしていいのか、わからなかったし、少し腹立たしかったせいもある。
「あなたは、スーパーで豚肉買うときに、雄か雌かなんて、考えて買う、ってか? 違うよね、わたしが殿様でも姫様でも、あなたには関係の無きこと。」
言われてみれば、確かにそうに違いない。
私は、方針を変え、態度を改めてみた。
「そ、そうね。そ、それはそうとして、ええと、LPSさん、あなたは、私とあの彼が飛ぶところ、見たことがあるの?」
骸骨の彼について、相手が食用豚であれ、自分から話すのは勇気が要る。世界が何処でどう繋がり、影響しあっているかがわからない以上、自ら進んで彼のことを口にするのは、恐ろしい行為だった。
二度と一緒に飛べないどころか、会うことすら出来なくなってしまうのではあるまいか・・・。
「あなたが眠りの中で自らつくりだしてる彼なのにねえ、どうにもならないのねえ。逢いたくても逢えない。飛びたくても、この夢の街の地面に縛られたまま。
それはそうと、ねえ、知ってた? 飛ぶ夢を見る女って、男になりたいって願望があるんですってさ」
あいかわらず私の質問は無視されてしまったが、リトル ピンク スワインの言う事は、いちいち正しかった。
幼い時分から、よくよく、飛ぶ夢を見てきた。
それが、この十年ほど、骨の彼にいざなわれなければ、飛ぶことが出来なくなっていた。
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by chaiyachaiya | 2012-01-29 21:26 | 骨、或いは私の愛の物語 | Trackback | Comments(0)

骨、或いは私の愛の物語 4 リトルピンクスワインとの対話

月は、病気の女のなかなか伸びない爪先を切りとって、夜空に滑らせたように、ひんやりと闇に浮かんでいる。
それでも、その細い光源から、光りは絶えず滴り落ちてきていた。私が豚と語りあうには、充分な明るさだった。
豚と私は、月の明かりが一番強く感じられる場所に、お互いに歩みよった。気がつくと、廃駅のベンチを思わせる長椅子が、目の前にあった。
「豚が、ニワトリのように鳴くというのは、難儀なこと。疲れるのではありませんか?」
本当は、まずその理由を聞きたかったのだが、私なりに、遠巻きに、敬意をはらった。豚が、どんな出方をするのか、様子うかがいもしていた。
「わたしのなまえは、リトル ピンク スワイン。りゃくして、LPS。」
豚の声には、人間の少年のそれに近い響きがあったけれど、私の質問に応じるつもりは、全くなさそうだった。
この私の夢の産物は、写実の世界に留まろうとしているらしい。隣にメルヘンチックに腰掛ける、というカタチはとらず、あくまでも偶蹄目の矜恃を示さんとするかのように、長椅子の座面に先割れ蹄で立っている。・・・自らスワインって名乗るくらいだから、仕方ないのかなあ。スワインもチキンも食われてなんぼの身の上でございます、ってことで、ニワトリ振って鳴いたのかなあ。LPSって、なんとかシンドロームみたいだなあ。
私は、食用豚としての役目を果たすには、まだまだ小ぶりなピンクの豚のすがたを、もう一度見てみた。
ルノワールの描く女の人の肌を想わせる桃色の内側には、黄色や青、灰色など、様々な色味が潜んでいる。
驚いたことに、瞳の色は、矢車草の花の色、つまり、理想的なサファイヤブルーで、充分に理知的なのだった。少なくても、私より賢そうに見える。
食用豚を名乗りながら、自分が『豚』だという本当のの自覚はないのだろう。どこか、楽しそうだった。
蹄の先は、乳白色に虹が溶け出したように品良く輝いている。ペディキュアではなさそうだ。本来の美しさならば、象牙どころではない価値となるだろう。繰り返し、この虹色に輝く蹄が伸び生えてくるのなら、スワインの立場に甘んじている必要はなくなる。
感心して見ている私に、ピンクの豚は言った。
「あの骸骨の彼と街を飛べなくて、さぞかし、口惜しいことでしょうね」
リトル ピンク スワインのサファイヤの目が、真っ直ぐに私を見ていた。
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by chaiyachaiya | 2012-01-28 12:04 | 骨、或いは私の愛の物語 | Trackback | Comments(0)

骨、或いは私の愛の物語 3 リトルピンクスワインの出現

骨というのは、私にとって、時間そのものだ。
・・・生きていれば、絶えず損なわれてゆくもの。
とりわけ早い時期から骨が溶けだし始めた私にとって、或る意味で、骨は、命の証しそのもの。
堅牢な骨が、欲しい。
この眠気に屈せずに、運動をし、筋肉を適度に破壊したところに、低カロリーをうたったプロテインを摂取し、筋肉の再生をはかり、刺激とし、なんとか、この、雪の女王が引っ越していって、輝きを失った古い城のような、すかすかの骨の城に、命の息吹を取り戻さなくては。
寝ている場合じゃないだろう。
ふいに、フランソワーズ・サガンのことを、思い出した。サガンは、その晩年、骨粗相症による痛み(彼女の場合、若い頃の大事故の後遺症による痛みが、ベースにあったのかもしれないけれど)から、杖なしでは外出がままならなかったそうだ。
フランソワーズ・サガン女史もすなる骨粗相症状態かあ・・・。
かあ・・・

居間の真ん中のソファー島に、私という骨組みがカサカサの難破船がうちあげられた。

あれ、あなた、一昨日の夢のおしまいに出て来た、灰色の猫くんじゃないの。薄墨桜色の肉球で、ひたひたと、夜の路地を歩いてた。
それは、私の声に反応するように、こちらに向かって、月明かりの下に歩み出てきた。
あれ?
「ぶっひっひっひー」
四つ足動物に間違いはないが、シルエットもカラーリングも違う。猫じゃないな、きみ。
「ぶっひっひっひー」
そやつは、偶数の蹄の偶蹄目、豚のようだった。豚なのだけれど、ニワトリの「こけこっこー」をまねた発声をしては、時々少し誇らしげに、夜の始まりの空を見あげながら、私のほうへ近づいてきた。
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by chaiyachaiya | 2012-01-22 23:08 | 骨、或いは私の愛の物語 | Trackback | Comments(0)

骨、或いは私の愛の物語 2 骨の王子の事

  昨日、文章にして、意識の上に、多少なりともいつもより多く彼のことをのせてしまったからなのか、前回の逢瀬、飛行から、半年と経っていないにもかかわらず、骸骨の紳士は、私の夢の中に、降りてきた。
 
彼は、気配を感じさせる間もなく、いつもより、幾分荒々しく思える着地の仕方で、現れた。
街の上の空は、これまでのような黄味ブルーではなく、見事なプルシャンブルーに染まりかけていた。
これから、夜が来るのだ。
鉄とコンクリートの高速道路の縁に、私たちは立ち、幾世紀も前の街並みを見降ろしている。

彼の肋の空洞を通った微風が、私の頬を打つ。その風に混じる、かすかなかすかなカルシウムのにおい。生のにおいなのか、死のかおりなのか、やはり検討がつかない。ただ、彼が、変わらずにいてくれることを、私は願っている。
 
彼の魂は、彼の骨質の肉体に似て、とても堅牢にできていると、私は信じたい。

  その魂も肉体も、どんなことがあっても損なわれることはないのだ、と眠りのなかの私は、勝手に安心して、一般的には死のシンボルである骸骨に、身も心も寄り添わせる。
  すると、彼はまず、天鵞絨のマントの内側に、私を仕舞う。
  街のひとびとからすれば、死がおばさんを覆い、呑みこんだ瞬間に見えるだろう。

街のひとびとは・・・
彼らは、骸骨の紳士の名前を知っている。
けれど、私に、決して教えてはくれない。口には出さない。
本当は、彼の名前が美しい響きを持ち、今では骨の骸でしかない彼には似つかわしくないと感じるからなのか。

今では。・・・たった今そう私は言い、気がついた。
私は、これまで、彼の、本来のあるべき生の姿を、一度も想ったことがなかった。
私にとって、彼は、美しい骨の城で、それで充分だった。

それとも、心の底で私は、彼に対して、今以上、今以前のものを求めることを恐れているのかもしれない。
彼が傷つくことに、耐えられない。
傷つく様子を見てしまうと、私の彼への思いが、形を変えてしむまうようで、怖い。
傷ついた彼は、スマートフォンのごみ箱に吸収されるように、するりと私の世界から消えてしまうのではあるまいか。
一度ごみ箱をくぐってしまうと、取り戻したつもりでも、もはや彼ではないのではあるまいか。

私は、何を怖れているのだろう。

彼のマントの内側は、夜になると、色が変わっていた。
緋色から、濃いアメシスト色に転じている。
静かな紫の闇に覆われて、やっと私は、深い呼吸ができる。

私は、彼の言葉を待った。
勿論、彼の骨の口腔から、私の耳に直接どんな音も響くわけではなく、魂から魂への無音の伝言なのだが。

なのに、ほどなくして、彼は、彼の装束もろとも透きとおっていき、消えてしまった。
私の左腕に、彼の肋の右側の感覚だけが残った。

街の何処かの路地で、灰色の猫が、大きく伸びをして、柔らかい淡墨桜色の肉球で、夜の散策に出ようとするのが、見える。
夢の法則下にある私には、見える。

唐突に鳥瞰したり、歩く猫の肉球すれすれの地面をごく近くに感じたり、夢のなかの私は、その掟に従い、自らに翻弄されるしかうつ手がなかった。




  
  
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by chaiyachaiya | 2012-01-14 23:42 | 骨、或いは私の愛の物語 | Trackback | Comments(0)

骨、或いは私の愛の物語 1 骨の王子の事

   一年に一度、背が高く美しい骸骨の紳士と、私は夢のなかで、空を飛ぶ。
レム睡眠のなかで、ふうっと、骨でできた彼の気配を隣に感じると、懐かしさと愛おしい気持ちに満たされる。
  織姫と彦星ならぬ、おばさんと骸骨の逢瀬の舞台は、星空ではなく、黄ばんだ雲に覆われた街の上と、いつもだいたい決まっている。雲間からのぞく青空も、やや黄身を帯びて見える。
  西洋の油彩画のニスが、やや経年変化した色ぐあいに似ている。

  彼の肉体は、アイスダイヤモンドのように白濁し、微かに光りを放っているようなのだが。
  この街のひとびとは、あの骸骨の骨のどこにも、光りなど存在しないという。あるのは、禍々しい白い闇だけだという。
  肉を持たない肉体なんて、と、厳しく唾棄される。
  あたりまえのことを言われた私は、つめたい石畳の路地にへたり込みそうになる。

  彼のことを、髑髏、と表されるのも、好きじゃない。どくろ、と読んでも、しゃれこうべという響きも嫌。
  頭部だけみたいだし、余計な、安っぽい物語性がくっついてくる感じがする。

  彼の装束は、細部まできっちりと作りこまれている。ちょっと古風ではあるが、彼にふさわしい。
  重い緋色のマントを翻し、重力の掟や、生命の定め、あらゆる決まりごとのくびきを、一瞬で解かして、私の骸骨の紳士は、空を飛ぶのだ。
  温かくも冷たくもない、彼の骨の掌に、私のまだ肉のある手のひらを重ねると、次の瞬間にはもう、街を見降ろしている。
  手と手を重ねる前の、彼が私の方を向く一瞬は、いつ思い返しても、切なくなるばかりだ。

  これは、私に与えられた特権なのか、なにかの罰なのか、未だよくわからない。

けれど、彼と私の年に一度の逢瀬は、十年、続いている。

  
  
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by chaiyachaiya | 2012-01-13 15:35 | 骨、或いは私の愛の物語 | Trackback | Comments(0)

世の中に絶えて片付けのなかりせば

 父に言われたことがある。
 「この世には、部屋を片付けられない家系というものがあることを、おかげ様で、知るにいたった。わが家では義母、妻、娘、と直系で脈々と受け継がれている。」
ああ、片付けられない血脈。なにゆえ、淘汰されずに今日にいたったのか。

父は、車のボンネットに、鳥の糞どころか、虫の糞?のような、粒、いや、粉が付着しているのを発見するやいなや、ただちに除去し磨きなおすことを厭わないきれい好きだった。
自分の留守中に、十五分ほど滞在した客人があれば、「ん、誰か来客あり、だったな」と、換気扇の最強スイッチを押した。
区分けし排除し、他者と自分の領分の稜線は、太字ゴシック体で、くっきりさせておく性分。
というと、冷たい人間みたいだが、太字ゴシック体の成分は、それほど強いものではなく、「いろんなとこまわってるけど、おたくのお父さんくらいお人好しはいないね」と、取引先の若い男性に言われたくらいだから、筋金入りの人好さんでもあった。
父の太字ゴシック体の成分表は、どうなっていたんだろう。
 
話しは戻って、片付けられない、という私の特技?についてですが、ものごころついた時分から、まわりの人々の毎日の暮らしを見あげては、不思議に思っていました。
にんげんは、毎日、身繕いをし、食事の準備片付け、その他にも懸念事項が降ってきて、でも、毎日食べたり片付けたり、そしてだんだん死んでいく。
そこに喜びを感じていても、見出せない人も、いなくなる。
どうしたことか?
母は、暮らしや季節のうつろい、時節の行事には興味がなさそうで、ついでに、私の存在にも、さほど喜びをを見出していないと見うけられた。
どうしたことか?
が、子どもの私の心に降り積もっていった。

それと、私が片付けられないことに、何の関係があるのか?

どんよりもやもやの重たい心を、なんとか動かして、片付けなくては。

一週間きれいな部屋を保った後、私は、必ず風邪をひく。
部屋をきれいに保つことは、汚ない部屋に自責の気持ちでいる以上に、わたしの免疫機能を低下させるらしい。難儀な事だ。
でも、片付けなくては。

河合隼雄氏が生前記されていたと思う。
「苦手をなんとかしようと頑張るよりも、得意なこと好きなことを追求したほうがええとちゃいますか」
得意なこと好きなこと、が、結局は、ただ蹲って体温を下げ、免疫機能を下げること、に落ちつくのは、忍びないなあ。

・・・古文で最初に覚えた歌を、一瞬の後、こんなものに変えていた私だった。

世の中に絶えて片付けのなかりせば 春の心は のどけからまし

業平さん、ごめんなさい。
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by chaiyachaiya | 2012-01-08 14:10 | 難儀なこと | Trackback | Comments(0)


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