ふみちゃこ部屋



村田喜代子さんの「屋根屋」を読み終えて見た夢。

村田喜代子さんの「硫黄谷心中」は、図書館から借りる、読む、返却する、を幾たびも繰り返した果てに購入し、大切な愛蔵書となっている。
彼女の、新作単行本「屋根屋」を、昨日読み終えた。表表紙の、男女が街の上を飛ぶ絵を、わざとシャガール風に描いたものだと勝手に思っていたものは、れっきとした、マルク・シャガールの“Above the Toun”という作品だった。

村田喜代子さんの小説家としての力量に平伏し、眠りについた私は、朝方、こんな夢を見た。

巨大な空母の乗組員として、作業服を着て、颯爽と任務をこなす、現実よりも、グッと若い私が、司令官や同僚達の狭間で、動きまわっていた。
カーキ色のツナギ姿の私がまた、結構カッコいいのである。
けれど、渋くて筋肉に満ちた上官が、苦渋の表情で言うまでもなく、宇宙からの攻撃が、もうすぐ開始されることは、乗組員全員が、意識してもいて、ちょっとどう対処していいのか、実際、異次元空間からの未知の砲撃を受けたなら、自分らは、この船は、この星は、ひとたまりもないんじゃないか、という、暗黙の、未曾有のトラジティに対する諦観が、私達を支配していたと言っていい状況でもあった。

だというのに、こともあろうに、艦内では、クイーンのコンサートが、既に始まってる。

短髪で髭付きのマッチョなフレディ・マーキュリーが、スタンドマイクを振りかざし、ステージアクトを繰り広げてはいるのだけれど、そのフレディの容貌は、鴨川つばめさんの漫画「マカロニほうれん荘」のフレディ・マーキュリーを実体化したらこうであろう的なもので、何か、素人っぽく、戯画っぽく、質感がややブレているようで、そのコスチュームは、チョークの粉をはけた如くの桃色なのだった。タイツまでもが。

私の右前の観客席には、ちょっと肥え始めた頃の、クイーンのドラマー、ロジャー・テイラーがいて、ステージ上のフレディに、出来れば、もう舞台から降りるようにと、苦々しい表情で、合図を送っている。

それでも、オーディエンスは、そこそこ盛り上がり、ずぐそこに迫る危機など、誰も気に留めていないようなので、私の不安は、だんだんと高まっていった。

宇宙からの敵襲が、迫っているのだ。
ああ。
と、強く思った瞬間、天井から、何か降って来た。
胴体は龍、頭部は鶴、性別は、雌。そして、人間の女の影が、幽体のように、揺れながら重なっている、長い生命体。
美しいのか、禍々しいのか、多分、その両方なのだろう。
彼女の鶴の嘴が、私の胴体を咥え、挟んだまま、空母の天井近くまで浮上した。
艦内のひとびとは、驚き、一様にざわめきの声を上げたものの、「まあ、後は頼んだ」という顔つきで、こちらを見上げているだけ。

何が、後は頼んだ、なのか。
この長くうねる生命体と共に、宇宙からの侵略者に抗してくれ、ということなのか。

と、すぐに場面が変わり、この不思議な、美しく禍々しい生き物に抱えられたまま、もの凄いスピードで、海岸線の上空を渡っている私には、もはや、宇宙からの侵略など、何もかもが、どうだっていいことになっている。
その嘴や、羽根のようなものや、胴体から、私の身体は、幾度も、するすると滑り落ちたけれども、空中を落下することはなく、一緒に飛行を続けていた。
そのうちに、その、龍のような鶴のような、人科目の雌のような、そして、或る種、神ような彼女と私の魂は、通じあっていたように感じるのだった。

龍のような鶴のような彼女が、極北の街で、降下した。
予め、決めていたことらしい。
木造の、小さな窓が壁に連なる一軒家の浴室の、木製のバスタブに身を沈めると、彼女は、あたりまえのように、一気にするんするん、三つ子を産んだ。

龍に近い男の子。鶴に似ている男の子。ちょっとだけ、鶴の名残りのある、女の子。彼女が一番、人間らしさ、ヒューマンビーイングの幼児の愛らしさを持ち合わせている。メルヘンチックに、愛らしい。

あ。
その幼女に、愛しさを感じた瞬間。
私の身体は、ニンゲンの男の子のそれに、変化していた。

今しがた、三様な三つ子を産んだ、龍のような鶴のような、女神のようなその生き物は、自らの子らと、少年に変じた私を、慈愛に満ちた目で交互に見ながら、出産直後のその長い胴体を、ゆったりと、飴色の木肌の床に寛がせていた。
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by chaiyachaiya | 2014-07-09 19:02 | ねこの寝言 | Trackback | Comments(4)
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Commented by saheizi-inokori at 2014-07-09 22:53
予約したばかり、読んだらまたきます。
Commented by chaiyachaiya at 2014-07-09 22:56
「帰ってきたヒトラー」気になっていました。
佐平次さんのブログ読み、したり顔で家人に語る私です。むふ。
Commented by sweetmitsuki at 2014-07-10 05:50
80年代のSFアニメみたいな夢ですけど、もちろん村田喜代子氏の「硫黄谷心中」って、そういう物語じゃあないんですよね。
Commented by chaiyachaiya at 2014-07-10 06:43
はい。全然違います。
「屋根屋」の方は、夢の中で飛ぶ場面があるので、いくばくかは、かぶっていますが。
飛ぶ夢を見ることが多い女の人は、男性化願望がある、と何かで読んだのですが、どうなのかなあ。
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