人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ふみちゃこ部屋



偽メーテルの館と落下する夕方のジュヒー

故 立川談志さんが、生前のインタビューで、
「うちの女房は、片付け、なんてのは、世の中のゴミを、あっちからこっちへ、移動させることだから、って、掃除なんかしないよ」
ということを、言っていらした。
片付けが苦手な私とっては、暗黒世界において、天空からの一条の光りを見るような気持ちにさせてくれる言葉だった。

私が、どのくらい片付けられないかというと、例えば亡き父は、こう表現していた。
「この世には、片付けられない種族がいるということを、母、娘、孫、直系三代を通して、解らせてもらった」
この場合、孫、にあたる部分の担当が、私なのだった。

どんなに、心映えの芳しくない人であろうと、住まいが綺麗に片付けられているとしたら、きっと神サマは、整理整頓できない私よか、場を清めている、という理由で、目をかけられるのではあるまいか、と感じて、しょんぼりしながら生きている。

可愛い猫ちゃが、三匹もいるのに、YouTubeに映像をあげられないのは、滅多に写真をUP出来ないのは、お家がぐちゃぐちゃだから・・・ううう・・・。
「早稲田隊を呼べ」「いや、発掘作業の前に、固定電話からかけてみよう」
これは、私の携帯電話が、自宅リビングルームにて遭難した時の、家族の会話のパターンである。
あな恥ずかし。

ところで、片付けられない、散らかしっぱなしの人のことを、座敷童子、ならぬ、“座敷荒らし”と呼んだりする方がいるのだが、この頃、私は、何故だろう、関西の友人から、座敷荒らし、ではなく、“偽メーテル”という呼称で語りかけられるようになった。
ここ一年半で、17kg近い体重減少(ダイエットの成功譚にあらず)をみた、細っそりした私への称賛を織り込んだ呼び名なのかと思いきや(細身になったところで、メーテルさんに似るわけもないのですが)、理由は、予測だにせぬところにあった。

「あの、◯◯子さんの関西弁、めちゃくちゃ上手いんやけど、『でんがな』とか『でっしゃろ』とか『まんねん』とか、そんなに言わん。あの、メーテル役の声優さんが、ヴァラエティ番組で関西弁使うんやけど、◯◯子さんのも、同じ感じで」

というわけで、私は、頭身の足りない、“偽メーテル”となったのであった。

そして、この偽メーテルの館のリビングのテーブルは、いつも、単行本や雑誌、カタログなどで、ごったがえしている。
もはや、テーブルの稜線も見えぬ。

或る日の夕刻、テーブルの椅子に腰掛けたところ、ソファの背凭れで香箱座りをしていたペルシャ猫ジュヒーが、唐突に私を見詰め始めた。そして、眼力の限り、
「にゃおん、おか〜たん、今から甘えに、傍まで行くからね〜っ」
というメッセージを寄こすやいなや、テーブルの端の方の、書籍重なり合う、微妙な地点に飛び乗ってきた。

・・・ジュヒーは、ずりっズリッと、彼女がテーブルの領分だと信じてジャンプした、あまたの本らと共に、ゆっくりと、落下していった。
その表情は、お正月に放映された、「フローズンプラネット」で、シャチ達に翻弄され、あげくに、氷の小岡から、シャチの口腔へと、ずりずり引き摺り降ろされるアザラシの絶望感には敵わなかった。だが、
「お、おか〜たん、これって、如何してえええええ〜っ」
という、ジュヒーの魂の叫び声を、私は確かに聞いたと思った。

ジュヒー、すまん。本当に、ごめんなさい。
by chaiyachaiya | 2013-04-23 22:39 | ねこの寝言
<< 賽の河原の石積みのような日常と... ヒルデガルド、ジャンヌ、二人の... >>


猫と日常と非日常

by chaiyachaiya
カテゴリ
Twitter
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のトラックバック
検索
タグ
その他のジャンル
最新の記事
冬の眠気でぼんやりしてきた。
at 2021-01-14 16:58
ポチ顔のわたしと思い出のねこ顔。
at 2021-01-12 14:30
彼女に彼女を紹介する。
at 2021-01-09 14:56
手袋の雪。
at 2021-01-07 16:37
天と地の間に。
at 2021-01-06 14:41
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧