「ならぬ」
父王は、滑稽なくらい、絵に描いたような威厳をもって、私に言い放った。
「異教徒の、蛮族の、血は要らぬ。彼らの血は、我々の王国の大地、夢のキングダムの大地を穢す」
予想通りの、芝居じみた父王の立ち振舞いを、私は、醒めた目で見ていた。
しかし、一方で、私は既に、父王の言うところの、異教徒の、蛮族の、オレンジ色に燃える髪を持った娘との未来を、諦めてもいた。
これまでの帝王学が無意味に感じられるような、狂おしい愛に凌駕されながら、国を治めることは、難しい。
その娘によって、私は、むしろ、為政者としての、分別を知るに至ったのだ。
一度、決意すると、私は、冷淡な振る舞いの男だった。
父に娘とのことを問うたのも、予定調和的な確認でしかないように思われた。
いや、私は、そう思いこむことによって、自らを護っていたのかもしれない。