聞いておくれ。
虹色のプチバルーン状の髑髏は、完璧に丸い虹色の私に語りかけた。
ああ、虹色髑髏さん、あなたは、私の嘗ての夢の主が焦がれていた、髑髏の紳士の係累 でしょうか、それとも、本体様でしょうか。
私のように、ぷかぷか、更にあなたは、その御首をカクカク、なんだか滑稽で、その分だけ、酷く哀しい姿にも思えます。
私は、もうすっかり、思い残すことなく、綺麗なまんまるになって、すべての世界のあわいに漂い、結構良い気分でいるというのに。
嘗ての夢の主の夢の中で見かけたあなたは、それは美しい骸骨の紳士でした。うっとりするほどです。あなたの美しさに並ぶものは、ボヘミア公 聖バーツラフの聖なる髑髏ぐらいだと思います。
夢の主だったあのおばさんが、私の姿を認識出来たのは、月の光の下で、一度っきりですけれど、彼女の夢の路地裏から、私は、あなた方を幾度も見ていましたよ。
可哀想な彼女は、一年に一度だけ、あたかも織姫と彦星みたいにしか、あなたとは会えていないって信じてるけれど、本当は、もっと、夢の中で、自在に空を飛んでいましたよね。二人で。
あなたは、彼女の夢から立ち去る時、彼女が、現実の時間をきちんと、なんとか生きられるように、夢に幻惑され過ぎないように、注意深く、彼女の夢絵巻から、自分の姿を消し、緋色のマントを翻して、消え去ることを繰り返していましたね。